重曹が酸性の汚れを中和する?重曹が汚れを落とす仕組みを解説!

重曹を使ったナチュラルクリーニングでは必ずと言っていいほど、「重曹はアルカリ性だから酸性の汚れを中和して落とす」と聞きます。

しかし、実はこれは、半分間違いなんです。

そこで今回は、中和とは何かと、重曹が汚れを落とす仕組みについて解説しようと思います!

スポンサーリンク

中和とは何か

「重曹が酸性の汚れを中和する」の、「中和」とは一体何でしょうか。

中和のポイントは次の2つです。

【中和とは】
  1. 中和とは、互いの性質を打ち消し合うこと
  2. 中和により、水と塩(エン)が生じる

     

    1つずつ見ていきましょう!

    中和とは互いの性質を打ち消すこと

    酸性とアルカリ性

    中和とは、酸性とアルカリ性の水溶液が混ざることで、お互いの性質を打ち消す反応のことをいいます。

    酸性には「酸味がある、金属と反応して水素を発生させる」性質があり、アルカリ性には「苦味がある、手につけるとぬるぬるする」性質があります。

    これら酸性とアルカリ性の持つ性質が、お互いを混ぜることにより打ち消されて無くなるのです。

    【補足】中和=中性ではない

    中和=中性ではありません。

    中和が起きても、必ずその水溶液が「中性」になるとは限りません。

    中性とは、水溶液のpH(水素イオン濃度)が7の状態を指しますが、「中和反応が起きる=pHが7になる」わけではありません。

    混ぜる水溶液の量や濃度にもよりますし、後述する、中和で生じた塩が水に溶けて、酸性またはアルカリ性を示すこともあります。

    中和で水と塩(エン)が生まれる

    食塩

    中和を理解する上でもう1つ大切なことがあります。

    それは、中和が生じることにより、水と塩(エン)ができることです。

    「水と塩(エン)???」と思った方も多いでしょう。一体どういうことでしょうか。

     

    まずは、「水」についてみていきます。

    例として、酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液とを混ぜた場合をみてみましょう。

    酸性の水溶液は水素イオン(H+が多く、アルカリ性の水溶液は水酸化物イオン(OH-が多いです。これらのイオンが、酸性やアルカリ性の性質をあらわす素なっています。

    この水素イオンと水酸化物イオンが結びつくと、水(H2O)になります。

    H++OH-→H2O
    水になることで、H+とOH-はもうありませんので、酸性またはアルカリ性の性質をあらわす素は無くなりました。つまり、お互いの性質を打ち消したということですね。
    次に、「塩(エン)」についてみていきましょう。
    塩とは、「中和反応でできる水以外のもの」を言います。
    例として、塩が生じる中和反応の代表例、塩化水素(塩酸)と水酸化ナトリウムを混ぜた場合を見てみましょう。
    HCl(塩化水素)+NaOH(水酸化ナトリウムアルカリ)→NaCl(塩化ナトリウム)+H2O(水)
     まず、HCl(塩化水素)のH+と、NaOH(水酸化ナトリウム)のOH-が結びついて、H2O(水)になります。
     次に、残ったCl(塩素)とNa(ナトリウム)が結びついてNaCl(塩化ナトリウム=食塩)になります。
    HClとNaOHを混ぜると、「食塩水」ができるんですね。
    そして、この中和反応で生じたNaCl(塩化ナトリウム)が、「塩(エン)」というわけです。
    「中和で水と塩(エン)が生まれる」という意味が分かったでしょうか。
    注意したいのが、塩(エン)とは「中和反応でできた水以外のもの」なので、塩(エン)=食塩ではないという点です。誤解なきように!

    重曹が汚れを落とす仕組み

    キッチンの掃除

    「中和」について分かったところで、重曹は本当に中和反応でもって汚れを落としているのか、という点について考えてみたいと思います。

    重曹が中和できると言われる酸性の汚れの代表的なものは、次の2つです。

     

    • キッチン周りの油汚れ
    • 手あかなどの皮脂汚れ

     

    これらの汚れを重曹が中和するというのはよく聞きますが、実は重曹が中和できるのは皮脂汚れだけです。

    皮脂汚れには脂肪酸というものが含まれており、この脂肪酸と重曹が中和反応を起こします。

    脂肪酸と重曹の中和によって生じる塩(エン)は、「石けん」です。

    R-COOH(脂肪酸)+NaCOH3(重曹アルカリ)→R-COONa(石けん)+H2O(水)+CO2(二酸化炭素)
    脂肪酸はそのままでは水に溶けにくいですが、中和反応で石けんに変わり水に溶けやすくなり、汚れも落ちやすくなります。
    以上が、重曹が汚れを落とすメカニズムです。ちなみに、私たちが普段使っている石けんも、この中和反応を利用して作られています。
    「じゃあ皮脂汚れ以外の酸性の汚れは重曹で落ちないの?」というと、そうではありません。
    あくまで、中和反応で落とすことができるのは皮脂汚れだけであって、それ以外の酸性の汚れもちゃんと重曹で落とすことができます。ただ、中和反応で汚れを落としているわけではないですよということです。
    例えば、料理用油などの動植物油脂の油汚れは、重曹程度の弱いアルカリでは反応せず、もっと強いアルカリでないと反応は進みません。
    そしてその反応は、中和反応ではなくケン化と呼ばれます。ケン化においても石けんが生まれ、これが汚れを落とします。
    さらに、動植物油脂は酸性の汚れではありません。動植物油脂は、いわゆる中性脂肪と呼ばれているもので、その名の通り「中性」です。
    したがって、重曹が酸性汚れを中和するというと、少し語弊があるんですね。
    とはいえ、重曹が酸性汚れに効果的なのは間違いないありませんし、「重曹が酸性汚れを中和して汚れを落とす」というのは、イメージをつかむには分かりやすい言葉です。
    しかし、実際には酸性汚れと言われているものでも実は中性であったりして、重曹では効果が薄い汚れもあります。
    重曹での掃除に慣れたなら、次はこのあたりを意識すれば、より効果的に重曹を使いこなすことができるはずですよ!

    まとめ

    重曹が汚れを落とすメカニズムを知らなくても掃除はできますが、仕組みを知ればより楽しく掃除ができるのではないかと思い、今回の記事を書きました。ポイントは、次の3つです。

    • 重曹は中和反応により「石けん」を生み、汚れを落としやすくしている
    • 動物性油脂などの油汚れは、重曹では落としにくい場合もある
    • 動物性油脂などの油汚れと、アルカリの反応は「中和ではなくケン化」

    重曹での掃除に慣れてきたときや、あまり効果がないなと感じたとときに、何かの手助けになればと思います。

    ぜひご参考に!

    スポンサーリンク